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旅館に着いた、紗夜と浅葱。
『あ~疲れたっ!』
直ぐさま、ベッドに自分の体を投げる浅葱。
紗夜は隣にある、もう一台のベッドに座り、深い溜め息をついた。
『はぁ…』
紗夜の溜め息に振り向き、浅葱が声をかけた。
『紗夜?』
『ん?ごめん…。都町って後どのくらい歩くのかなぁ…って、ちょっと考えてた。』
苦笑いする紗夜。
浅葱は体を天井に向きを変えた。
『都町まで、後そんなにかからない。紗夜…歩き出してから、愚痴る事なく歩いたから、ご褒美だな。』
上を向いたまま、笑って話す。
『そう…ありがとう。あっ!私、温泉に入って来るわ。』
紗夜はいそいそと準備をして、一人、温泉に浸かりに行った。
女湯の暖簾を潜ると…温泉特有の硫黄の臭いが、鼻をつく。衣類を脱いで、お湯に浸かるとじわじわ体が温もりだすのが心地良く感じた。
上を見上げると、夕焼けがオレンジ色に空を焼いていた。
『凄い…綺麗…。なんか贅沢だなぁ…。ゴメンネ…浅葱…』
少し考えて紗夜はお風呂から上がった。
ガラガラ…
濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に入る。
『ただいま。浅葱…?』
返事が無いので、ベッドを覗き込むと、浅葱は夢の中だった。
紗夜はクスリと笑う。
『ふふっ…あんたも疲れてたんだ。ゆっくり休んでね。今までありがとうね。』
携帯電話に付けていた、ピンク色の天然石ストラップだけを外し、テーブルに置いて
浅葱からもらった、布を被り、一人旅館を出て行く紗夜。
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