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ガサガサ…
『おっ?いたいた!ちょっと、おじさん。そいつ、俺の連れなんだけど…放してくれない?』
若い男の声がした。顔を上げると、さっき出会った男が立っていた。
『兄ちゃん、何を吐かしておる、これは、ワシらの物だ。そう簡単には渡せねぇよ』
『あっそぅ、じゃ…力ずくでも返して貰うよ』
笑う若い男は、身構える。3人の男達は腰に挿してあった刀を、若い男に向ける。
『こっちは、3人だ。お前は武器も持っていない、逃げるなら…グッ!?』
若い男は、踵で回し蹴りを喰らわせた。ドサッ…白目を向いて、口から泡を噴いて倒れた。
『クソッ!…舐めやがって!若僧がぁっ!』
若い男に、刀を振り回すが…
断ち筋を、ひょいひょいと身を躱し隙を見て、打撃を喰らわせ、また一人ノックアウトさせる。
『さぁ…痛い目に遭いたくなかったら、その娘を返してよ。』
ニッコリ笑いながら、若い男が言う。
『うるさい!コイツの命が欲しいなら、黙ってろ!?』
男は紗夜の首に刀を向けた。刀の刃先を間近にやられ、紗夜の顔が、引き攣る。
(本気なの!?このおやじは!?)
若い男は変わらず笑顔だ…
沈黙が続く…
どれくらい時間が経っただろう…。だんだん、イラツキが紗夜を襲う。ワナワナと紗夜の体が震えだし…プチン…小さな何かが弾けた。
『ちょっと!?あんた助ける気あんの!?おっさんも、いい加減にしてよ!!』
紗夜は、おっさんの腕に力いっぱい噛み付く。痛みの余り、腕の力が緩む。その隙に逃げようとした紗夜の後ろから
『痛てぇ!このっ…小娘がぁっ!』
刀が振り下ろされる。
(もぅ駄目だぁ!!)
頭を抱えしゃがみ込み、痛みを覚悟して、力いっぱい目を閉じる…
ガキン!
『グハァっ!!』
ドサッ…
(あ…れっ!?)
恐る恐る、目を開くと3人の男達が倒れている。
『助かった…』
紗夜の目からボロボロと大粒の涙が溢れる。その顔を見て、若い男は焦った表情で
『なっ…何泣いてんだよ!?』
『恐かったんだよ!』
泣いている紗夜を見かねて、若い男は、紗夜を抱き上げ、溜め息ついて言った。
『一旦、此処から離れるぞ。奴らが起きたら、面倒臭い』
抱き上げられたまま、紗夜は頷く事しか出来なかった。
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