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「そして、その空白の時間の間に、犯人が引き出しから宝くじを盗んだわけだよ」
「では犯人は誰なんですか?」
長瀬さんの不安げな声と入り口の扉が開く音が重なった。勢いよく開いたドアに視線を送ると、そこには息を切らした野本有栖がいた。
「ハァ……ハァ……」
「どうしたの?」
あんちゃんがようやく口を開いた。有栖は入ってすぐに前かがみになり、息をゼイゼイ吐いている。
「いや……俺の鞄にこんなものが……」
すると有栖はリュックから、宝くじを取り出し僕達に見せた。僕達は興味あり気に覗き込む。
「長瀬さん!さっきの紙切れプリーズ!」
俊が大きな声を張り上げて、手招きをする。まさか本当に有栖が盗んだのだろうか?いやしかし、この様子からそんな風には見受けられない。
慌てて長瀬さんが紙切れを俊に渡し、それを比べ合わせる。番号の違いは一目瞭然だった。俊、胡桃は唖然と口を開けている。
「これは一体……?」
ようやく背筋を伸ばした有栖が、長瀬さんに尋ねる。長瀬さんは罰が悪そうに笑ってみせた。
「もしかして、長瀬さん」
と僕が言いかけたところで、あんちゃんがそれを制した。なんだといわんばかりに視線を彼女に向けると、あんちゃんは語り始めた。
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