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「長瀬さん、私には一つわからないところがあります」
「なんですか、安養寺さん」
「あなたはミスを犯している。これが故意なのかどうか判然としないところと動機です」
あんちゃんが言うと、長瀬さんは俯いて、頭をボリボリと掻いた。どうやらあんちゃんの真剣さにたじろいでしまったようである。
「俺はただ、のほほん倶楽部と言われたこの部活にサプライズを与えたまでですよ」
「もしかして……すべて長瀬さんが!?」
今気づいたのか、胡桃はハッとした表情をした。有栖、俊も同様の顔をしている。
「そしてミスは……長瀬さんが『今朝確認したときにはまだあった』と言った部分」
蒼井さんが急に口を開いた。有栖は今彼女の存在に気づいて、驚きを顔に表した。
「蒼井さんが仰る通り、『鍵を掛けた引き出しから、宝くじが消えるわけがないのは確実である』
もし長瀬さんが、今朝紙切れだけを確認し、実物は見ていないと証言していたら、有栖に容疑をかけれただろう。
まぁ、番号が違う時点でアウトになるのは、置いておいて……」
長瀬さんは渋面を作り、悔しさを顔に滲ました。どうやら彼にとっては遊び心だったらしい。
「長瀬さんは、昨日宝くじを購入し、今朝新聞とともに部室に来た。
そして偶然にそこに居合わせた有栖を見て、アイデアが閃いた。
長瀬さんは新聞を確認し、外れた宝くじを有栖の鞄に忍ばせ、新聞にある一等の番号を紙切れに写し取った。
そして、何も引き出しに入れぬまま部室を出た。当たりですか?」
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