三億円当選!

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「宝くじはあの引き出しの中にしまってます。鍵はここにあるんで、胡桃さん開けてもらえますか?」 胡桃の後ろには、戸棚のような引き出しがあった。それを指差し、長瀬さんは腰にぶら下げたホルダーから一つだけ鍵を取り出して、一番奥に座っている胡桃に渡した。 「何番目の引き出し?」 「上から二番目です」 胡桃は言われるがままに二番目の引き出しに鍵を突っ込み、右に回し、また元の位置に戻して、鍵を引き抜いた。そして胡桃が引き出しを開ける。 「あれ……?長瀬さん……空っぽやで」 「まっ……!まさかそんなことないですよっ」 慌てて長瀬さんが僕達の間をすり抜けて、胡桃の元に駆け寄った。それに釣られ、各々腰を上げる。 「……ない……一体どうやって……」 引き出しを開けたり閉めたり繰り返し、他の引き出しも調べる長瀬さん。焦りようは異常であたふたとしている。 「ちょっと!長瀬さんしっかりしてくださいよ!『鍵掛けてある引き出しから消えるはずなんてないんですから』」 胡桃が傍らに立ち声を上げた。僕も側で見守るが、『確かに鍵はかかっていた』。胡桃が長瀬さんの前で嘘を言うはずがない。 「すみません!皆さんこの部室のあちこち調べてもらえますか?お願いします!」 祈るように長瀬さんは頭を下げた。言われなくても、みんなあちこち調べ回っている。 一体どこに消えたのだろうか……?
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