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窓ガラスがバンバンと音を立てる。外では風がビュンビュンとなびいており、ざざ降り模様である。
「おかしな点は、『鍵を掛けた引き出しから、宝くじが消えた点』だね」
あんちゃんが一人ごとのように呟いた。俊は長瀬さんの話を聞き、自分なりに考えを整理しているようだった。胡桃はこの状況に口出しせず、黙っているだけである。
すると、蒼井さんがのそっと腰を上げた。ひょろひょろと体を揺らしながら、宝くじが入ってた場所に移動して、屈み込む。その様子を誰しもが眺めていた。
「……鍵穴しっかり見た?これ……潰れそうなくらい傷いってるよ」
そのひ弱な声に僕達は彼女の横にそれぞれ屈み込み、鍵穴を覗き込んだ。
「ほんまや!誰かが壊そうとしたみたいや」
胡桃が叫んだ。僕もそれを見て、声を上げそうになった。鍵穴はかなりの傷が付いており、何かで叩いたようだった。
「ってことは盗難ですか?」
「っていうことだな」
長瀬さんは驚きを隠せない様子で俊を見つめた。あんちゃんは首をひねりながら、考えていた。
「でも盗難でも鍵がかかっていた引き出しから宝くじを盗むのは不可能ですよ」
僕は声を上げた。一同が頷き、沈黙が流れる。一体どうゆうことなのか、判然としない。
鍵穴の傷、しかし鍵は壊れていないという矛盾。そして、宝くじの紛失。謎が多すぎる。
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