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すると、蒼井さん、あんちゃんが同時に長瀬さんを見た。その目は何かを見据えるかのごとくじっくりと。
「っていうか有栖おらんやんけ。あいつ一番怪しいんちゃうか?」
胡桃が今気づいたかといわんばかりに、首をキョロキョロ動かした。
「確かにあいつ怪しいな……。長瀬さんが朝部室に来る前に、先に誰か居ませんでした?」
俊がちらっと長瀬さんを一瞥し言う。この二人はまだわかっていないようだが、どうやら蒼井さんとあんちゃんは何かを掴んだようだ。突然口を閉ざした。
「……俺が来る前に確かいたかもしれんが、よくわからないです……。部室には俺一人でしたから」
「ってことは空白の時間を俊は言いたいの?」
僕がいきなり言うと、胡桃、俊、長瀬さんは僕の方を驚きの眼差しで振り向いた。
「空白の時間ってなんや……?」
ポカンと口を開けて胡桃は首を傾げる。「つまり」と言いかけたところで、俊が途中から代弁するかのごとく、割って入った。
「つまり、長瀬さんの前に『誰かいた可能性があるならば、長瀬さんが昨日から今日にかけて鍵をかけていない空白の時間が存在した』ってわけだよな?」
僕が言わんとしていたことを、上手く代弁した俊は誇らしげに白い歯を見せた。しかし、この推理はどこか不完全な点がある。
一体どこだろうか?
長瀬さんと胡桃に関しては、なるほどと感心しているが、それとは対照的に蒼井さん、あんちゃんは納得いかない様子である。
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