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「あのっ……好きです」
登校中の学生達や出勤中のサラリーマンで賑わう駅構内。
俺はいきなり見知らぬ人に告白されて驚きを隠せずにいた。
「ごめん……俺、そっちの趣味はないから」
申し訳なさそうに断れば、相手はハッとしたように言う。
「ぼ、僕は男だ!」
そんなの分かってる。
学ランを着ているではないか。
それ以前に、周りの野次馬的な視線がかなりウザい。
ただでさえ俺は学生服を着用せず、ジャージを着ているため目立つのに、駅構内で告白なんて注目の的ではないか。
短髪でジャージを着て登校している子と有名男子校の生徒。
かなり禁断の空気が漂っている。
「俺のこと、分かる?男だよ?」
核心をついて指摘すれば注目していた周りの人達は"とうとい言っちゃったかぁ"と好奇心旺盛に騒ぐ。
「えっ……?君、どう見ても女の子でしょ?」
戸惑いながら言う彼に周りのみんなは笑っていたが、俺は驚きのあまり目を見開き口をポカンと開けてしまった。
「なっなんで分かったの?」
そう、俺は……私は女だ。
入学したばっかりの頃に痴漢に遭ってしまい、恐怖のあまり学校に着くまでの登校通路では、男と装い痴漢に遭わないようにしている。
かなり目立つが痴漢に遭うよりは数倍マシだ。
「な、なんでって言われても……」
彼は私を最初から"女"だと気づいて……分かっていたんだ。
ドキドキ
「あのっ……返事」
そういえば告白されたんだと思い出し頬をピンク色に染めてしまう。
「まだよくあなたのこと知らないけど……」
"けど"?
「お願いしますっ!」
勢い良く頭を下げると同時に周りからはヒューヒューと指笛が鳴り響く。
どうやら彼に一目惚れしたみたいです。
【end】
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