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――。
見送る相手の背中が見えなくなる頃。
すっかり大人しくしていた帽子屋が、静かに近づいてくる。
「……よかったのかい?」
「何が?」
相変わらずの笑顔を浮かべ、知らないふりをする。
笑顔は鎧。真実を隠すための。
「だって彼は君の……」
「忘れているなら、知る必要はないよ」
さぁ、お茶会を続けよう。
そう告げる笑顔はやはり作り物じみていて。
そんな表情に慣れてしまった彼は痛々しい。
「お湯を沸かしなおさなきゃね。冷めたお茶は好きじゃない」
そう言いつつ猫舌な彼は、お湯を沸かすために一度家の中に入る。
その背中を見送りながら、帽子屋は地面に転がるネムリネズミを椅子に座らせる。
君が望むならいつまでも続けよう。
終わりを知らない、狂ったお茶会を。
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