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「あったあ!」
715番。私は人混みの中、合格者が張り出される掲示板の中から自分の受験番号を確認すると、同じ高校を受験した友人、奈々の姿を探す。
「桜、合格したよ」
私が探すまでもなく、彼女は後ろから人混みをかき分けてきた。
どうやら2人とも合格したようだ。
「やったぁ! 同じクラスになれるといいね」
私達が合格した私立四葉学園は8クラス。同じクラスになる確率は決して高くはない。
「ふふっ、そうね。高校でも宜しくね。お父様は迎えにいらっしゃらないの?」
周りを見渡せば、歓喜の余り携帯で電話を掛ける人、番号がなかったのか泣き出してしまう人も数多くいるというのに、奈々は落ち着いている。
こんなことを考えている私も彼女と同類なのかもしれないけれど。
「うん、来ないよ。仕事」
いつものことだ。仕事一筋で家庭を顧みず母さんに家を出て行かれたような父さんだ。
娘の高校の合格発表になんて来るはずがない。
私達は人の流れに乗って窓口に行き合格通知と書類を貰うと、部活勧誘は無視して、まっすぐ奈々のお母さんが待っているという、学校近くの無料駐車場へと歩を進めた。
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