全力でアピール

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「朝居」  試験に向けていつもより真面目に授業を受けた俺は、やけに気疲れして机に伏せていた。昼休みになって現れたカイトは、いつもと変わらない様子で昼食に誘ってきた。  ふたつの包みを持って中庭に移動すると、木陰に座って俺に隣に来るよう示してくる。 「金泉と佐渡は? 気付いたら教室にもいなかったし、今日は別々なんて言ってたっけ」 「たまにはふたりきりで食うのもいいだろう」 「……それって金泉たちのことだよな?」  俺はべつにカイトとふたりで居たいなんて願ったことはないので、きっとあのバカップルが言い出したに違いない。沙穗ちゃんはクラスメートと約束しているのだろうか。今日も姿はない。  カイトが差し出してきた弁当箱を受け取り、蓋を開ける。中身を見て密かに歓声を上げながら、カイトの様子を窺った。  迎えに来る前に購入してきたらしいお茶のペットボトルに口をつけるカイトは、あまりに普段通り過ぎて違和感を覚えた。昨晩、確かに俺に対して思うところがあったように見えたが……。  あからさまに見つめすぎたせいか、カイトが首を傾げて顔を覗き込んできた。 「な、なに? 近いんだけど」  息がかかりそうなほど顔を寄せられ、俺はどぎまぎとカイトの肩を押し返した。あまりに真剣な瞳が、昨日の記憶と重なる。 「カイト……やっぱり怒ってるのか?」 「怒る? べつに俺はなにも怒ってなんかいないが」 「でもさ……」  だったらどうして、そんな怖い顔をして俺を見ているのか。  愛想が悪いのはいつものことだが、それにもまして表情が暗い。だんだんカイトが怖くなってきて身動ぎできずに居ると、距離をますます縮められて鼓動が跳ね上がった。  唇が触れ合う。緑茶の味のする舌が乾いた表面を舐め、合間を縫って口内に侵入する。みずみずしい感触が俺の舌を絡め取り、チュッと濡れた音を立てた。  俺が抵抗しないことを知ると、カイトの口づけは激しさを増す。いつしか、舐めて、吸って、噛んでと、口でできうる限りの愛撫を与えられ、すっかり腰砕けになっていた俺は、カイトの手が体の中心部に触れていることに気付いて悲鳴を上げた。  そこはキスの心地よさに熱く膨らみ、カイトの手指に顕著な反応を見せて震えている。こんなどこからでも丸見えな場所で興奮状態にさせられたことが信じがたく、そして許しがたかった。  
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