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「な、なにしてんのあんた……っ」
隣でガタガタ騒々しいなと振り仰げば、天井付近にカイトの顔があった。どうも便器に乗り上がり、個室を隔てる壁と天井との隙間に頭をねじ込んでいるらしい。シュールだ。
どうしてそんなことを、などと聞くだけ無駄だ。ここまで変態だとは思わなかったけど。
「サイテーだな」
「……正直自分でもそう思う」
「馬鹿……。トイレの外に出てろ」
心から軽蔑して告げると、カイトはすごすご頭を引っ込め、素直にトイレから出て行ったようだ。聞き耳をたてられている可能性を考慮して、水を流しながら処理を済ませた。
手を洗い、弁当を持って外に出ると。
「あれ、カイトの可愛いおチビくんじゃないか。なに、便所飯?」
「げ、斑目……先輩」
なにやら書類を抱えた斑目が職員室のあるほうからやってくる。もしかしたら生徒会室から出てきたのかもしれないけど、どちらにしろタイミングの悪さに舌打ちしたくなった。
今ここでカイトとくっつくよう薦められたらいろいろと面倒だ。主にカイトが悪のりして――と、そこでようやくカイトの姿が見当たらないことに気が付く。てっきりトイレの入り口あたりで忠犬してるかと思ったのに。
俺がキョロキョロしていると、訳知り顔で斑目が職員室を指差した。
「カイトなら棗先生に呼ばれて職員室に行ったよ。すぐ済むんじゃないかな? ほら」
言われてそちらに目を向けると、ちょうどカイトが一礼して職員室の扉を閉めるところだった。まるで図ったかのような一連の流れに、居心地の悪さを感じる。斑目は宇宙人かなにかか?
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