全力でアピール

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「そのお弁当、やっぱりカイトのだよね。見覚えあると思った」 「ああ、そういう……。あの、じゃあ、俺は行きますんで」  この人のこの「なんでも知っているんだよ」という態度が苦手だ。今も、俺の取る行動や疑問に思うだろうことを的確に予想し把握しているし、なんというか気持ち悪い。気が利きすぎているのも考え物だなとお節介なことを考えながら、そそくさとカイトの元へと向かった。 「カイト、行こう」 「ああ、悪い待ったか? 偶然棗先生に会ってな。もう昼休みも終わってしまうし、会議室を使っていいそうだからそこで食べよう」 「うん、もうどこでもいいから。早く」  とにかく斑目に変なことを吹き込まれないうちに移動しようと、俺はカイトの背中を押して言われるままに職員室横の空き部屋に入った。生徒会役員というだけで毎回待遇がいいのは、相手が棗だからだろうか? あまり深く考えるともやもやしてくるので、俺は頭を振って棗や斑目のことを思考から追い出した。 「ああ、そうだカイト。さっき生徒会のことで呼ばれてたんだろ? もしかして今日は活動があるのか?」 「ある。けど一時間もしないで帰れるから、よければ待っててくれないか」 「オッケー。その代わりというかなんというか、今日も勉強見てくれないか。昨日帰ってから気付いたんだけど、金泉が貸してくれたノートがかなりわかりやすくて……。お前の教え方と合わさったら怖いものなしだな、と」 「……そうか。そういうことなら俺の家でしよう」  快く請け負ってくれたカイトに感謝し、俺は気分良くカイトの弁当をたいらげた。
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