全力でアピール

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   あれから特にもめることもなく、金泉に送られてきた舞原さんと入れ違いに帰路についた。  晩飯のあと風呂に入ってからもカイトの意味不明な態度が気にかかっていた俺は、携帯を手に金泉に連絡を取った。  とりあえずカイトのことでわからないことがあれば、幼馴染みの金泉に報告というサイクルができている。佐渡はカイトの肩を持ったりするし、恋愛に関しては俺と同等かそれ以下の経験しかないだろうから、相談相手からは自然と除外されていた。  数分もしないで電話に出た金泉は、俺の苛立った声に不思議そうにしながらもその原因がカイトであることをピンポイントで当ててきた。超能力者かこいつ。 「カイトと喧嘩でもした? 今日もラブラブ勉強会デートしてきたんでしょ、うらやましい。あーあ、ボクも邪魔が入らなければ洵一といろーんなお勉強できたのになぁ」 「沙穗ちゃんが邪魔だというのかテメェ。おまえのことなんかどうだっていいんだよっ、この変態野郎が」 「ひどーい! 話聞いてあげないよ? なんかヒーローくんひとりで解決できないようなことがあったから電話してきたんじゃないの?」  こいつ、まさかマジモンか。内心気味悪く思いながらも、まさにその通りであるので無駄話を切り上げて本題に入る。  まず先日の一騒動中に感じたカイトの違和感に始まり、今日のトイレでの一件と勉強会でのあらましを話した。  金泉はつかの間沈黙し、それから呆れたように俺に対して苦言を呈してきた。 「あのさぁ、ボク的にはカイトが不憫でしかたないんだけど? まあ、ちょっと思い詰めすぎかなと思わなくもないけど、ヒーローくんも少しくらいカイトの気持ち考えてあげなよ」 「はあ……?」  なぜカイトが哀れまれる立場なのか。可哀想なのは俺じゃないのかと、電話口で首を傾げる俺を見透かしたように金泉は続ける。 「だってさ、それってつまり嫉妬だよね。ヒーローくんが沙穗ちゃんのことばっか心配するから、カイトやきもきしてんじゃないの」 「は? なんでそうなるんだよ。俺もう舞原さんに振られてるし、カイトが妬くようなことなんてなにも……」 「それをさ、ちゃんと教えたげなよ。ヒーローくんはいまさらって思うかもしれないけど、カイトもそろそろ限界なんじゃない? いい加減ヒーローくんのこと諦めちゃうかもね」
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