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金泉は俺に自分の行動を振り返るよう忠告し、電話を切った。
カイトが俺を諦める。つまり抱きついたりキスしたり、好意を求められたりというのがなくなるということか。万々歳じゃないか。
とってもいいことだと喜ぶ反面、どこかで納得できない自分がいることに気づいた。
もし金泉の予想が当たったら、カイトは二度と俺に話しかけることをしなくなるのだろうか。もともと学年が違う上、最近では教室に来ることもないし、昼休みすら一緒に過ごせない日もままある。そもそも接点もあまりないのだから、会おうと思わなければ話しどころか顔を見ることすらなくなるのだ。
今までどれだけカイトが俺のところへ通い詰めていたのかを考えると、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
散々ないがしろにして、ちっともカイトの苦労を理解しないで、やつの気持ちの上であぐらをかいていたのだ。本当にこれでは奴隷か召使いでしかない。
友達と思ってくれればいいと言ってからも、カイトは俺にたくさん尽くしてくれた。お弁当に始まり、勉強まで嫌な顔ひとつせずに面倒見てくれて、それを当たり前のように甘受していた。
俺からはなにも返せていないのに、お礼を要求するでもなく嬉しそうな顔を見せて。
――――俺ってすげぇ最低なことをしてるんじゃ?
その考えに至った途端、罪悪感に胸が締めつけられた。
これでは金泉がカイトを不憫に思うのも道理だ。それでも、俺がカイトを恋愛対象に見ていないのも確かで、嫉妬をされても困惑してしまうだけなのには変わりない。
俺が沙穗ちゃんを好きだったのはカイトも承知していたし、そのときも嫉妬している様子はなかったように思う。単に俺が気づいてなかっただけかもしれないけど、今みたく態度にあからさまにだしてきたことなんてなかった。
それが、なぜ今になって。
限界ってなんの限界なんだ。さっぱりわからない。このままでなにがいけないのか。どうして友達でいられないのか。
俺ひとりではどうしても答えが見つからなくて、カイトのことや金泉の言葉で頭を悩ませながら、まんじりともせず朝を迎える羽目になった。
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