全力でアピール

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 モバイルゲームで時間を潰し、そろそろ部活動に励んでいた生徒たちも帰りだそうかという頃、ようやく目当ての人物が通用口から姿を現した。 「それじゃあ、舞原先輩。私たちはここで」 「ああ」  両隣を囲んでいた役員なのだろう女の子らと別れ、カイトはまっすぐと俺のほうへ進んでくる。  うつむいている所為か目の前を通り過ぎてもまったく気がつかないので、俺は慌てて腕を掴んで引き止めた。 「ちょ、素通りすんなよ!」 「っあ、朝居? どうして……」  驚いた顔をして立ち止まったカイトから目を逸らし、俺はそれまで考えていた言い訳をしどろもどろに告げる。 「べつに一緒に帰ろうと思って待ってたんじゃないぞ。どうせ家に帰っても暇だから、なんならまたおまえんちで勉強でも……」 「――悪い、朝居。今日は無理だ」  途中で遮られ、俺は反射的にカイトを見上げる。 「そ、そう……まあ、連日はな。迷惑だよな。あ、なら明日は?」 「……明日も駄目だ。明後日も」 「――なんか用事?」  まさかカイトが俺からの誘いを断るとは思わず、俺は動揺して震える声を抑えつつ、続けて問いかけた。 「用事はない」 「じゃあ、俺が邪魔で自分の勉強に集中できないから?」 「……」  カイトは応えない。無言で目線を地面に落とし、申し訳なさそうに口を噤んでいる。  その姿がかえって質問の返事となり、俺は心臓が冷えるような感覚を味わって唇を噛みしめた。
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