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「そうかよ……。そういうことならもっと早く言ってくれればよかったのに……」
「違うんだ、朝居」
「なにが違うんだよ? 否定しないってことはつまりそういうことだろ。な、なんだよっ、そんな顔して……!」
腹立たしさに地団駄を踏む俺の前まで歩み寄ったカイトは、今にも泣き出しそうな顔でしょぼんと項垂れた。まるで俺が虐めているみたいでムッとなる。
俺だって泣きたいくらいだ。
「俺が悪いんだ。おまえは気に病まないでくれ」
「気に病まないわけないだろ! もういっそはっきり言ってくれよ、邪魔なら邪魔って!」
「邪魔なわけないだろう。むしろ嬉しい」
「ばっ、かじゃねーの……。あんたの思考ってほんと支離滅裂すぎて理解できる気がしねえ」
言葉足らずな発言に振り回され、脱力気味に愚痴を漏らすと、カイトはいつかのように物憂い瞳で俺を見つめてきた。
「お前のためだから……。勉強なら、どこか図書館に入ってしよう。ふたりきりは駄目だ」
「今さら……べつに俺はそれでもいいけどさあ。でも今日はちょっと確かめときたいことがあるから……できればふたりになりたいんだけど?」
「っ、そうか……」
途端に落ち着きなくそわそわしだすカイトだったが、なにをためらっているのかなかなか頷こうとしない。
本当になんだというのだろう。最近のカイトの不審さは目に余るものがあったが、今日は飛び抜けて異様だ。
なにか悪いものでも食べたのかと、カイトの頭から足先までを矯めつ眇めつ観察する。
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