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「最近すげえ変だしさ。なに、発情期?」
「……悪い」
「否定しないのかよ!」
そこは違うと言って欲しかった。
なんとも気まずい空気にしてしまったせいで、カイトとのあいだに沈黙が下りる。
「……まあアンタが年中発情してるのは今さらのことだけどさ、ちょっと状況考えようぜ。俺は真面目な話がしたくて連れてきたんだよ」
冷静になるべくその場に座ると、胡座をかいて腕を組む。
俺はこいつになにを聞くつもりでいたんだっけ?
カイトと話してるうちに頭がこんがらがってきて、当初の目的をすっかり忘れかけていた。
「おまえも座れよ。座布団とかないし、ベッド使っていいから」
「……悪い」
カイトがベッドの縁に腰を下ろすのを見届け、俺は頭の中を整理してから口を開いた。
まず聞きたいのは、俺に対してなにか思うところがあるのかということだ。
「俺なりにいろいろ考えたんだけど……、まずはおまえの本音から聞かせてくんない? 俺のこと、どう思ってる?」
「……好きだ」
「うん。そうじゃなくて、なんかムカつくとことかないの? カイトってあんま不満とか言わないし、せっかくだから聞いておこうかなーと」
むしろここで聞き出しておかないと話は進まない。
彼は意識していないのかもしれないが、なにかしらの不満を抱いているのは確かだ。だから俺に物言いたげな顔をして見せたのだし、不審な行動ばかり取って落ち着きがないのだろう。
俺の問いに、カイトは首を捻って考え込んでいるようだった。
「不満なんて、そんなもの……」
「あるだろう? ムカつくまではいかなくても、なにか言いたいこととか」
「言いたいことはいつも言っている」
「ああー……うん、言ってるな。言ってるけど、そうじゃないっていうか。ぶっちゃけ沙穗ちゃんのことで勘違いしてることない?」
「それは……」
否定しないということは、やはりわだかまりがあるようだ。
金泉はその勘違いをどうにかしろって忠告していたから、まずはそこを弁明しとこう。
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