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「――本当に?」
「おまえが退いてくれるならな……」
俺の言葉に、カイトは身を起こして傍らに正座した。
「焦りすぎなんだよ、アンタは。そんなに押せ押せでこられたらこっちも怖いし、そういうことするのが目的なんだと思うだろ」
乱れた服を整えながら起き上がり、カイトから距離を取ろうとテーブルを回り込む。
カイトはしょんぼりして肩を落とし、俺の説教に子供みたいな仕草で頷いた。
「もっとさ、あるだろ。手順ってのが」
「手順……?」
「そうだよ。チューとか、え、えろいことする前にさ、どっか出かけたり……みたいな」
つまり、デートを重ねてから慎重にことを進めるべきだと言いたいのだ。今時の高校生の性事情はすごいと聞くけど、なにも俺たちまでそれに倣わなくともよいだろう。
もっとスローペースに、お互いのことを理解し合ってから致すべきだ。
――――そういうのって乙女思考すぎるだろうか?
しかし俺の言いたいことを把握したらしいカイトは、うっすらと微笑んでそうだなと相槌を打ってくれた。
「朝居の言うとおりだ。俺はおまえに拒絶されるのが怖くて、順序もなにもすっとばして手に入れようとしていた。おまえと親しくなりたかったのに、正反対のことをしていたんだな」
「カイト……」
なんだ、ちゃんとわかっているじゃないか。
俺は感動するあまり、カイトににっこりと笑いかけていた。
はっと我に返って表情を改めるも、ばっちりカイトには見られてしまっている。
かっかと熱くなる頬を両手で叩いて誤魔化し、甘くなりがちな雰囲気をどうにかしたくて放置していたグラスに口をつけた。
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