全力でアピール

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「それじゃあ、朝居。勉強しようか」 「お、おう……」 「――テストが無事終わったら、ふたりで出かけよう」 「……おう」  まるで告白が成功したかのような喜びようで、カイトはうきうきと教科書を広げている。  先ほどまでの思い詰めた様子はすっかりなくなっており、俺はホッと胸を撫で下ろして教材を取り出した。 「他にわからないところはあるか?」 「いや、もう大丈夫だと思う。ありがとな、遅くまで」  始めた時間が時間だったから、一時間もせずに勉強会は終了した。しかし、これでテストには余裕とはいかないまでも挑むことができるだろう。金泉のノートとカイト様々だ。 「おかげで俺のお小遣いは今後も安泰だ。出かけるとき、お礼になんか奢らせてよ」  ノート類を片づけながら礼を述べる俺に、カイトはかまわないさと首を振る。 「それより、約束してくれないか」 「約束? なにを?」 「俺の卒業までには返事をくれ。それまではいくらでも待つから。ただ、それ以上は辛抱できない」 「……つまり?」 「それまでに答えを出さなかったときは、俺とつき合うことに了承したと見なす」 「はあ……?」  傲慢な口振りで言い切ったカイトは、得意気な顔を残して帰って行った。  呆然としたまま見送りもできなかった俺は、携帯の着信音に気づいてようやくフリーズが解ける。 「あいつ、急に調子に乗りだしたな……」  それだけ浮かれているということなのだろうが、ドヤ顔での宣言に若干腹が立つ。  さっきまで雨の日に捨てられた犬みたいな顔をしていたくせに……。
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