全力でアピール

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「洵一? 洵一ならボクのベッドで寝てるけど。起きるまで暇だから、ヒーローくんたちの進捗具合を確かめようと思って電話したんだよ」 「ね、寝てるって、まさか……」 「あはっ」  お茶目に笑っているけど、つまりそういうことだよな。  友人たちの性事情なんてしりたくなかった。  佐渡のお尻の安否が心配だ。明日学校に来ないようであれば、お見舞い品に鎮痛剤でも持って行ってやろう。いや、痔の薬のほうが効くのかな?   頭を悩ませる俺の耳元で、ケラケラと金泉が笑い出す。 「ヒーローくんってば、人の心配してる場合じゃないでしょ。いずれはきみだって辿る道だよ?」 「はあああっ? 嫌だよ! なんで俺が……っ」 「カイトとつき合うってそういうことだよ」  彼はボクより立派なものをお持ちですから、なんて下品な発言をぶちかまされ、俺は二の句が継げずに押し黙った。 「それでもヒーローくんは自分の頭で考えて結論を出すって答えたんだから、逃げ出さないで義務を果たさなきゃ駄目だよ。そもそも、カイトがそんな簡単に逃がしてくれるとは思わないことだね」  ぐうの音も出ない正論に歯噛みする俺をよそに、金泉はそろそろ佐渡が起きそうだからと言い残して通話を切った。相変わらず自分の都合のいいようにしか行動しない男だ。  けれど……、 「そうか……。男同士って、そうだったよな……」  これまで散々カイトに押し倒されてきたというのに、すっかり忘れていた。というより、無意識に頭が拒絶していたというべきか。  煩悩の塊みたいなカイトのことだから、俺がつき合うことを受け入れた瞬間に貞操を奪いにかかるだろう。想像に難くない。  そうなると、やはり返答は期限ぎりぎりまで引き伸ばして時間を稼ぐか――――。  はたと我に返る。 「……なんでつき合う前提で頭悩ませてんの、俺?」  誰にともなく言い訳しておく。カイトへの恋愛感情なんて一切持ち合わせていない。間違いなく言い切れる……はずだ。
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