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カイトと和解してから数日。奴は依然として俺の前に現れない。けれど、そのあいだもお弁当だけは佐渡や金泉経由で届けられているのだ。
いい加減堪忍袋の切れた俺は、中身の詰まった弁当箱を持ったまま校内を歩いた。
事前情報もあり、確信を持って二年の教室までやってくる。
廊下は人で溢れかえっていたが、教室内は意外と閑散としている。ここまで来たはよかったが、上級生の視線に晒された途端に怖じ気づいた。
「カイトはどこだよ……?」
どこで得るのか、金泉によると今日は生徒会活動がないらしい。なので自ら足を運んでやったわけだが……教室内にいないのでは、この先どうすればいいのかわからない。
扉の前でうろうろしている下級生に興味を持ったのか、辺りにいた見知らぬ女子生徒が声をかけてきた。
「きみ、一年だよね。誰か探してるの? 呼んだげようか?」
くりくりした瞳が特徴的な、可愛らしい人だ。俺は二重の意味でドキドキしながら、彼女に向かって頷いた。
「は、はい。あの、カイト……舞原先輩はいないんですか?」
「舞原くん? さっきまでいたと思うんだけど……どこ行っちゃったのかしら」
教室の中をぐるりと見回し、彼女は首を傾げた。
「あ、いないならもう……あの、ありがとうございま――――ぅぶっ」
頭を下げて立ち去ろうとした俺は、襟首を背後から引っ張り上げられて息を詰めた。
「なっ、だれ――――?」
「こんなところで上級生をナンパなんて、度胸あるね。きみ」
「ま、だらめ……っ!」
息苦しさにもがけば、あっさりと解放された。
俺は苦手意識に身構えたまま、キョロキョロと逃げ道を探す。
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