5927人が本棚に入れています
本棚に追加
/492ページ
「朝居、ファイル寄こせ」
「や、いいよ。おまえだって持ってるだろ。っていうかよく弁当キャッチできたな」
「ああ、このくらいならな……。というかおまえ、中身食べてないのか」
片手でファイルを抱え、もう片手で弁当を横揺すりしたカイトが、困惑した表情で俺を振り向く。
食べていないどころか蓋を開けてすらいない。俺は頷いた。
「おまえがいちいちムカつくから、飯なんて食ってられなかった。作ってくれるのはありがたいんだけどさ、毎回人に持ってこさせんなよ」
「それは……すまない」
「いいよ。俺も……投げてごめん」
「朝居」
じっと見つめてくるカイトを放って、俺は資料室のスライドドアを足で開け放った。
室内の中心に設置された長机にファイルを置き、壁にズラリと並んだ書棚にファイル番号順にしまっていく。
「これってなんの資料なんだ?」
「これまでの生徒会活動を記録してある。文化祭の話し合いが今度あるから」
「ふーん」
気のない相槌を打ちつつ、次のファイルを取ろうと伸ばした俺の手を、横合いからカイトに掴まれた。
そのまま書棚に背中を押しつけるような体勢を取らされる。
「な、なに……っ?」
「片づけは俺がしておくから、おまえはこれを食ってしまえ」
動揺する俺を気にした様子もなく、カイトは弁当の包みを俺の胸元に押しつけてきた。
両手でそれを受け取り、空腹を感じていた俺はカイトの勧めに従うことにする。
折りたたまれて壁に立てかけてあったパイプ椅子を広げると、そこに腰かけて弁当を広げた。若干中身がシャッフルされていて落ち込んだ。
「それにしても、わざわざ文句を言うためだけに飯も食わずにいたのか?」
抱えたファイルをテキパキと棚の指定の場所に差し込みながら、カイトは愉しげに笑う。
最初のコメントを投稿しよう!