答えは内緒!

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「あ、ごめ……」 「いや……」  咄嗟に屈み込んで拾おうとした俺とカイトだったが、互いの距離の思わぬ近さに気づいた瞬間、顔を見合わせたまま動きを止めた。  睫毛の一本一本まで数えられる距離感はいつぶりだろう?  最近は接触自体が減っているから、顔が近いってだけでも変に意識してしまった。  先にフリーズが解けたのはカイトのほうだ。  うるうるした目を俺からパッと逸らし、手元のガオマオに向けられる。 「……そうだ、朝居。これ、ひとつ持って帰らないか? 落としてしまったので悪いが」  なにごともなかったかのように立ち上がったカイトが、ガオマオを片方差し出してくる。 「あ、ありがと……」  座り込んだままの俺は、漠然と感じるもどかしさに引き攣る頬を、無理矢理作った笑みで誤魔化しガオマオを受け取った。  ――――どうしたんだ、俺?  うまく表情を取り繕えないことに動揺するあまり、次の台に移動しようと手を貸してくれるカイトを直視できない。そんな俺を訝しむでもなく、カイトは神がかった腕前をその後も各種ゲーム機で披露してくれた。  時計の針が七時を指す頃、カイトがそろそろ帰ろうと出口へと歩き出す。  俺の手にはこぼれ落ちそうなほどの景品が持たされ、正直このまま外を歩きたくなかったので、慌てて前を行くカイトを引き止めた。 「ちょ、ちょっと待って! その前にこれ入れる袋みたいなの欲しいんだけど」 「ん? ああ、そうか。すまない、そのままでは電車に乗れないな。少し待っててくれ」  カイトは俺を置いて店を出ていくと、ものの数分で大きな紙袋を用意して戻ってきた。たぶん向かいの百円ショップで買ってきてくれたのだろう。  その中に詰め込むのを手伝ってもらい、ようやく手が自由になった。 「にしても、こんなに貰っていいのか? カイトが取ったんだから、沙穗ちゃんのお土産にしてやればいいのに」 「いや、いいんだ。それはおまえのために取ったから、おまえが持って帰るといい。それに、菓子ばかりだと沙穗に怒られる……」 「そりゃこんなにお菓子ばっか持ってこられたら困るよな。女の子はカロリー気になるだろうし。じゃあ、ありがたく貰ってくよ」
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