答えは内緒!

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 俺が美味しそうとつぶやいてしまったばっかりに、カイトは一時間ほどお菓子専用クレーンで粘ったのだ。  俺が音ゲーで遊んで帰ってきたときには、ケースの中はほぼ空の状態になっていたので、お店の人が見たら驚くかもしれない。その状況を想像して笑っていると、いつの間にかカイトは道路の遙か先を歩いていた。  ちょっと歩みが遅くなっているあいだに、数メートルも距離が空いている。どうして声をかけてくれないのかとムッとしながら駆け足で追いつくと、カイトが不思議そうな顔で俺を振り返った。 「どうしたんだ、そんなに慌てて」 「どうしたもこうしたも、おまえが置いていくからだろうが!」 「えっ……あ、すまない。見ていなかった」 「いや、俺もボーッとしてたから悪いんだけどさ……」  どうしたというのだろう。いつもならちょっとうしろに下がっただけでもウザいくらい気にかけてくる奴が、遅れていることにも気づかないうえ、見ていなかったと申し訳なさそうに告げてくる。  ぼんやりしていただけとは思えないが、もしかしたら疲れてうわの空になっているのかもしれないと思い至り、俺は気を利かせてどこかで一休みしないかと持ちかけた。 「まだ時間大丈夫なら、これのお礼になんか奢らせてよ。ほら、勉強見てもらった礼もしてないし」 「そんなこと気にしなくてもいいんだぞ? 俺がしたくてしているだけなんだから」 「借りを作ったままなのは嫌なんだって。……そうでなくても、おまえには世話になってばっかだし」  だからおとなしく俺に奢られてろと言い捨て、半ば強引にカイトの腕を引いてすぐ近くのコーヒーショップに入った。  カウンターに立つ店員のお姉さんがにこやかに注文を聞いてくる。その目がときたまカイトを盗み見るので、なぜかイラッとした俺はメニューをろくに見もせず指差して会計を済ませた。  商品を受け取って外に出る。うしろからついてきていたカイトが目を白黒させて俺の行動を不思議がっていたけど、その怪訝そうな視線をまるっと無視して手近な公園に向かった。  なんか今日の俺は情緒不安定だ。最近のカイトがおかしいだなんてどの口が言えるんだと自分で呆れてしまう。  ベンチにふたり並んで座り、カフェオレの入ったカップを片方カイトに手渡した。  
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