答えは内緒!

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 いい加減に注文したせいでカフェオレはホットだ。けれど隣に腰かけたカイトは、熱い飲み物に文句も言わず、嬉しそうに口をつけている。  なにか話題はないだろうか。俺は考えた末、沙穗ちゃんはどうしているのか聞くことにした。 「今日も金泉に送ってもらったのか?」 「……沙穗のことを聞いてるのか?」 「そうだよ。もしかして家でおまえの帰り待ってたりすんの? 強引に引き止めた俺が心配すんのもあれだけど……」  家でひとりなのだとしたら申し訳ないと思い聞いてみたのだが、カイトはあっけらかんとした様子で首を振る。 「平気だろう。今日は両親とも帰宅しているから、俺がいなくても気にしてない」 「そんなもんか……。カイトとは大違いだな」  兄妹間での想いの差が大きいことをからかうと、カイトは憮然とした顔でカフェオレを啜る。 「沙穗は可愛いし、力も弱いから、俺が守ってやらないと駄目なんだ。シスコンだと笑われようと、俺はあいつのことが大事だからおかしなことだとは思わない」 「べつに馬鹿にしたんじゃねえよ。ただ、羨ましいなって……」  俺には兄弟なんていないし、両親も仕事だとか旅行だとかで家を空けていることが多いから、いつも自分のことを気にかけてくれる存在というものに憧れがある。  カイトは料理も勉強もできるし、しみじみいい兄貴だと思う。  そんな奴に口説かれてんのか、俺……。  改めて考えるまでもないけど、俺の置かれた状況って本当とんでもない。ただの男子高校生が、こんなイケメンに迫られたりキスされたりってどうかしてるよ。  ――それに振り回されてドキドキさせられてる俺も大概だけど。  すっかりぬるくなったカフェオレに飲む気力が失せ、カップをベンチの上に置く。不意にその手を横から持ち上げられ、俺はギクリと動きを止めた。 「な、なに?」  カイトが正面を向いたまま、俺の手を強く握り締めている。  どうかしたのかと尋ねる俺には応えず、カイトは手を繋いだまま立ち上がった。  俺の飲み残したカフェオレを一気飲みして、空になったカップふたつを握り潰すと公園に備えつけられているゴミ箱に投げ入れる。そしてそのまま俺の手を引いて歩き出した。
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