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「脳味噌腐ってんのかこのトリ頭野郎。いいか、なんども同じこと言わせるな。俺は恥ずかしいのが嫌いだ。特に人前ではもっと自重しろ」
「すまない、これでも自重したつもりだった……。よければどこまで接触していいのか教えてくれないか?」
俺の手に頬をすり寄せ、大真面目に尋ねるカイトの頭を押し退ける。
「知らん。聞くな馬鹿。ってか触んな」
「……顔が真っ赤だ。この程度の触れ合いも恥ずかしいのか」
「なっ、このくらいで恥ずかしがるわけないだろっ!」
からかうような口調にカッとなり、思わず大声を出してしまった。
周囲の注目を一斉に浴びて全身が燃え上がりそうなほど熱くなる。
今すぐ線路に飛び込みたい気分で縮こまっていると、ホームに電車が入ってきて人の目が離れていった。
俺はカイトの横腹を肘でどつき、急ぎ足で車内に乗り込む。
座席が空いていなかったので扉の前に立ち、動き出した車窓の向こうを無言で眺めていると、傍に寄ってきたカイトが腕の側面を触れ合わせてきた。どれだけ注意しようと、ひっつき虫は治らないらしい。
邪魔くさいと振り払ってもめげずにくっつきたがるのは、きっと今日のデートに満足しきっていないからだろう。
もともとスキンシップの激しい男だったから、このくらいは許してやってもいいのかもしれない。
それから俺たちは、最寄りの駅で別れるまでぴたりと腕をくっつけたままでいた。
それからというもの、学校帰りにカイトとゲーセンに立ち寄ることが増えた。
馬鹿のひとつ覚えと言われるとぐうの音も出ないが、俺とカイトで放課後に遊びに行く場所なんて限られている。
映画とかカラオケは俺が断固拒否だし、手芸店につき合わされるのも嫌だ。カフェに入ったらカイトがケーキの味比べをしだすし、図書館で勉強ばっかりしててもある意味不健全だ。結果、通い慣れた場所へ自然と足が赴いてしまう。
今日も新作のクレーン台に奮闘したあとシューティングゲームで競い合い、一汗かいたらベンチに座って、缶ジュース片手に景品のお菓子を分け合った。すごく健全。
ウエハースをチョコレートコーティングしたお菓子を囓りながら、隣を横目に窺う。
炭酸飲料で喉を潤していたカイトが、視線に気づいて振り向いた。
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