答えは内緒!

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 花火は好きだ。そうつぶやく俺に、カイトは自分もだと微笑んだ。 「カイト、ヒーローくん。追いてっちゃうよー?」  両手にりんご飴や焼きそばやらのパックを持った金泉が、道端で休憩していた俺たちを呼んだ。  屋台の出店も地元の小さな祭りから比べると遙かに多い。それに種類も様々で、俺はいつしか不調だったのも忘れて食べ歩きに夢中になっていた。  そんなさなか、いか焼きにかぶりついていた金泉の横で、佐渡が突然焦ったような声を出す。 「シュウ、舞原さんがいない」 「うん?」  言われて俺も周囲を見渡すが、人が多すぎて沙穗ちゃんの姿を見つけられない。少なくとも、俺たちの目の届く範囲にいないことは確かだった。  はぐれてしまったのだろうか?  時刻は七時を過ぎ、来場者も夕方より格段に増えている。この中ではぐれてしまったとなると、探すほうも探されるほうも一苦労だろう。 「はぐれたときの待ち合わせ場所とか決めてなかったのか?」 「うーん、完璧忘れてた。どうしよう? とにかく、一回電話してみるね」  携帯を取り出しすぐさま沙穗ちゃんにかける金泉だったが、この混雑で果たして気づいてくれるだろうか?  彼女も同じように、連絡を取ろうとして携帯を手に持っていてくれればいいが。 「……繋がらないな」  留守録に切り替わってしまったという金泉が、再度かけ直すも結果は同じ。  俺たちは沈黙して顔を見合わせ、最終的には彼女の兄であるカイトに指示を仰いだ。 「二手に分かれて探すか。金泉と佐渡はこの先の道を、俺たちは来た道を一旦戻る」 「わかった。行くよ、洵一」  金泉と佐渡が海岸へと続く道へ駆けていった。俺はカイトのあとについて、一度通った道をくまなく見回しながら沙穗ちゃんを探す。  りんご飴、たこ焼き、焼きそば、綿菓子。立ち寄った店の前には行列ができ、そのどこにも沙穗ちゃんはいない。  冷やし飴、ラムネ、自動販売機。アイスクリームにかき氷、疲れたときに買い求めたくなる出店にも目を配ったが、やはり彼女の姿はない。どのタイミングでいなくなったのかもわからないから、どうにも探しようがなかった。  もしかしたら開けている海岸のほうへ進んだのかもしれないと思い直し、カイトと相談すべくそちらを振り返った瞬間、あっと小さく声を漏らした。
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