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第九話 夢の中叫ぶもの 闇の中囁くもの
無限とも思える程の質量を持つ闇が怪しくうごめく。
突如全てを支配していた闇が晴れ、一人の人物がそこに立っていた。
赤い髪を持つ女性、名はアルシェ。
アルシェは傷付いた右肩を押さえながら辺りを見回す。
「いるんでしょ出て来なさいよ」
アルシェは怒気の篭った声を出す。
「にゃは♪やっぱばれてた?」
少し間の抜けた声を出してフードを深く被った者が現れた。
フードを深く被っていて顔は見えないが声色から男性だとわかる。
「その傷結構やられたな」
「何が?私は任務を終えてあいつらと遊んだだけよ」男が挑発するような調子で言うとアルシェは殺気を剥き出しにして答えた。
「遊ぶだと?油断と慢心は隙を生む、気をつけろ」
二人の会話に割り込んでくるものが一人。
こちらもフードを被っているが、二メートル近い身長と巨大な身体を持っていることで男性だと直ぐにわかる。
「おっす、お前も来てたのか」
右手を軽く挙げ、男は言うが大男は何の返答もよこさない。
「無視ってへこむなー」
男はそう言って膝を落とす。
「あんたは何しにきたの?」
「・・・任務を終えて帰って来ただけだ」
大男はそれだけ言うと闇の中に消えた。
膝を落としていた男は暗い奴と呟くとおもむろに立ち上がった。
「何処へ行くの?」
「任務、場所は秘密で♪」男は口元に笑みを浮かべると闇に呑まれて消えた。
舌打ちをしてアルシェもまた闇に消えた。
誰も居なくなった空間には闇のみが残された。
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