夢の抜け殻

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第四話 白の閃光赤の奔流(前編) 「いっ!?」 ラークは大音声に耳を塞いだ。 そして木々を薙ぎ倒し大きな腕が現れラークを狙う。 その手についてる爪はギラリと黒く光り確かな殺傷力を秘めていた。 「ラーク!!」 「わーってるよっと!!」 バックステップでその爪から逃れたラークは剣を構えて目の前の魔物を見遣るが・・ 「まずいなーこれは」 ラークは目の前の赤を見る。 まだ実態の無い魔物は立て続けに炎を吐いてきたのだ。 「たく!クエイラ!!」 シンがラークに迫る炎に向けて呪文を唱える。 するとラークの目の前に大きな岩の壁が現れて炎を受け止めた。 炎が晴れ魔物の姿があらわになる。 雄々しく揺らめく赤いたてがみ、大木のような腕、手足に生える大きな爪。 きわめつけはその口腔から炎を漏らしている。 「ラーク本腰入れなきゃだぞこれは」 そういってシンは大槍を構えた。 再び魔物は咆哮し、火炎弾を三発放つ。 その炎を全て掻き消したシンは素早く魔物の内側に入り込み槍を振るう。 魔物の腿をえぐったシンは返す槍で脇腹を切り裂いた。 だが魔物は痛みを感じないように腕を振り上げてシンを潰そうとする。 「させるかよ!!」 受け止めたのはラーク。 しかもカウンターの要領で剣を振ったのでラークの剣は魔物の腕を切り裂いた。 攻撃は終わっていない。魔物の死角に入り剣を振る。 肩、腹、腕、胸それぞれ鮮血が飛び散る。 きっちり四度魔物はよろめいた。 だが魔物は倒れ無かった。爪でラークを弾き飛ばす。 「ぐあっ!!」 咄嗟に剣で防御したラークだが呆気なく飛ばされて地面を転がる。 そして隙無く吐き出される炎。今度はシンの呪文も間に合わない。 「炎がお前だけの物だと思ってんじゃねえ!!」 ラークはそういって剣の柄に赤い玉を嵌め込む大きさはビー玉ほどか。 すると赤の奔流がラークの剣を包む。 その奔流が収まった時には純白の剣の姿は無かった。 代わりにラークの手に収まっているのは焔の揺らめきがそのまま刀身になった片刃剣。 「第二の剣インフェルノ、焼き尽くせ!!」 ラークは叫び剣を振った。 すると焔が刀身から溢れ出し魔物の炎をたやすく飲み込む。 その炎は魔物をも飲み込んだが余り痛手にはなってないらしい。 だが次の瞬間ラークの剣が魔物の脇腹を貫いた。 そして傷口から炎が吹き出す、いくら火に強い魔物でも体の内側を焼かれれば終わりだ。 程よくして魔物は息絶えた。
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