夢の抜け殻

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第六話 仕掛刃の罠 アルシェが両手をあわせた乾いた音が木霊する。 すると魔物の口が開き奥に赤い光が見え隠れする。 「まっず!シン俺の後ろに!!」 ラークはそう言って剣の柄に赤いマテリアをはめ込む。 はめ込んだマテリアは炎の魔法を封じ込めた『ファイア』のマテリア。 はめ込むと突如赤い光が剣を包み炎の刀身を模った剣が姿をあらわす。 「的確な判断ね!でもこれが避けられるかしら!?」 アルシェがそう言うと魔物から膨大な炎が吐き出された。 先ほどの魔物が生きていた頃とは比較にならないほどの凶悪な威力が篭った炎。 だがそれを前にしてラークは退かなかった。 「避ける?馬鹿いってんじゃねえ!ぶち破るんだよ!!」 ラークはそう言って剣を上段に構えた。 赤い光がラークの体を包みその光は一気に剣へと収束していく。 そして眼の前の炎に向かって剣を振った。 「フィアフルブレイド!!」 振りかぶった剣から焔が生まれ魔物の炎を絶つ。 ラークの一振りから生み出された炎は魔物をいとも簡単に飲み込んだ。 慌ててアルシェは魔物を炎から退かせようとするがそれよりも早くシンは行動を起こしていた。 「少し遅い終わりだ、ハア!!」 シンは体を捻ってその反動で思い切り槍を横なぎに振った。 その槍は寸分の狂いも無く首筋に入り込み魔物の体と頭を分断させる。 「くっ!でもまだいけ・・・」 「だから終わりだって!!」 動揺するアルシェにラークはそう言い放ちすさまじい速さで剣を振るった。 すると魔物の四肢は見事に飛び、地面に落ちて鈍い音を響かせた。 今の魔物の状況は首、手足が無い、これではアルシェが操っているといえども戦えないだろう。 「っと、これで終わり、話しを聞かせてもらおうか」 ラークはそういってアルシェの喉に剣を突きつける。 「生憎捕まるわけには行かないの」 そういってアルシェは人差し指を軽く動かす。 するとラークに斬られた筈の魔物の腕が宙に浮かび爪がラークの背中を狙った。 ラークは横に避けるがそこにアルシェの蹴りがラークのわき腹に入る。 「次は油断しないわ」 アルシェはそう言って何かを呟く。 するとアルシェの体が徐々に薄くなっていきやがて消えてしまった。 「逃げられたか」 ラークはわき腹を抑えながら立ち上がる。 これまでの出来事が夢のように感じるが二度も戦いを強制された哀しい魔物と、辺りに広がる血のにおいが現実だという事を告げていた。
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