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「……宗一!」
自室の窓際で塞ぎ込んでいた美也子は、不意に顔を上げた。
宗一の帰りを待っている間に、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「何か大きな音がしたような……」
部屋を見回すと、まず最初に時計が目に入った。
午前2時…あれから2時間が経過している。
(ひどく…胸騒ぎがする…!)
美也子は素早く上着を羽織ると、客間へと走った。
館内は気味が悪い程に静寂に包まれている…そして、静寂さが不安を増幅させる。
(何もなければいいけど……)
ダンダンダンダン…ダンダンダンダンッ!!
「お父様!美也子です…開けてください!お父様ッッ!!」
客間に着くなり、美也子は叫びながらドアを叩いた。
だが、中からの応答はなく、美也子の声だけが虚しく館内に響き渡る。
「ここを開けッ……え?」
今まで気付かなかったが、ドアの中から鼻を衝く臭気が漂ってくる。
(中で一体何が……!?)
「お父様ッ!宗一ッ!お願いです!開けてくだ……」
「美也!」
「……!?」
美也子がもう一度叫ぼうとした時、背後から名前を呼ぶ男の声がした。
(この…声は……!)
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