狂気ノ夜1⃣

6/11
前へ
/384ページ
次へ
「……宗一!」 自室の窓際で塞ぎ込んでいた美也子は、不意に顔を上げた。 宗一の帰りを待っている間に、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 「何か大きな音がしたような……」 部屋を見回すと、まず最初に時計が目に入った。 午前2時…あれから2時間が経過している。 (ひどく…胸騒ぎがする…!) 美也子は素早く上着を羽織ると、客間へと走った。 館内は気味が悪い程に静寂に包まれている…そして、静寂さが不安を増幅させる。 (何もなければいいけど……) ダンダンダンダン…ダンダンダンダンッ!! 「お父様!美也子です…開けてください!お父様ッッ!!」 客間に着くなり、美也子は叫びながらドアを叩いた。 だが、中からの応答はなく、美也子の声だけが虚しく館内に響き渡る。 「ここを開けッ……え?」 今まで気付かなかったが、ドアの中から鼻を衝く臭気が漂ってくる。 (中で一体何が……!?) 「お父様ッ!宗一ッ!お願いです!開けてくだ……」 「美也!」 「……!?」 美也子がもう一度叫ぼうとした時、背後から名前を呼ぶ男の声がした。   (この…声は……!)
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

281人が本棚に入れています
本棚に追加