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「……!?」
「よかった…心配しましたよ。」
「誰………こ、ここは……」
未だ霞む目で辺りを見回すと、見慣れた天井と日下部の顔が視界に入ってきた。
「ご無事で何よりです…」
「日下…さ…無事……?」
…状況を把握する迄に多少の時間は要したが、どうやら自分は自室のベッドに横たわっている事に気付いた。
「ッ痛……!」
起き上がろうとしたが、感覚がない程に右手が痺れていた為、力が入らない。
(さっきのは一体……確かに私…客間のドアの前で…)
「…随分とうなされていらっしゃった様ですが、悪い夢でも?」
「……」
「私が客間に珈琲を運ぼうとした時にドアの前で倒れているお嬢様を見つけたので、こちらまで運ばせて頂きました。」
「客間…やっぱり!宗一…日下部さん!宗一…は何処!」
「お嬢様、どうか落ち着いてください。」
美也子は、まるで日下部の言葉が耳に届いていないかの様に叫んだ。
「確かに今まで宗一がいたの…宗一は何処に行ったの!!」
「お嬢様…」
「日下部さん!宗一は何処?そうい……」
「お嬢様ッッ!!」
「………ごめんなさい。」
日下部の一喝により、脱力した美也子は力なく床に座り込んだ。
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