281人が本棚に入れています
本棚に追加
「声を荒げてしまって申し訳ありません…宗一様は旦那様と話し終えた後、すぐに此処を発たれました。」
日下部は指で眼鏡を擦り上げながら言った。
「顔を見ると辛くなるので、お嬢様には告げずにとの事でした。」
「嘘…………」
その瞬間、美也子は心の中で何かが崩れる音を聞いた。
「…それに、旦那様も今日は疲れたとの事で先にお休みになられました。」
半ば放心状態の美也子に対して、日下部はまるで台本を読んでいる様な淡々とした口調で続けた。
「もう……いい……聞きたく…ない…」
美也子は子供の様にかぶりを振った。
「そう…ですか。お嬢様も随分とお疲れのご様子…今夜はひとまずお休みください……」
日下部はそう言って美也子に一礼すると、そのまま部屋を後にした。
「………」
最初のコメントを投稿しよう!