狂気ノ夜1⃣

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…どの位の時間が経過しただろう。 気付いた時には、もう右手の感覚は戻っていた。 (何も…言わずに行くなんて……愛してるって………言ったのに…) 右手の感覚と同時に宗一の身体の感触が右手に甦る。 (なのに……一言も告げずに…何も……何も言わずに…) そしてそれは一筋の涙に変わり、美也子の頬を伝う。 (宗一…どうして何も言わ………え?) 「何……も!?」 思わず言葉に出してしまった。 何も言わずに去る様な人間が、わざわざ話し合いに赴くだろうか… 部屋に忍び込んでまで、「愛している」と言った人間が何も言わずに消えるだろうか… それも、感染を恐れずに唇を奪った人間が…… 「ん……ッ!」 美也子は渇いた唇に指を這わせると、それを強く噛んだ。 …そして、ゆっくりと立ち上がると、父親の部屋へと向かった。
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