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「お父様…お話が…」
部屋は仄かに月明かりが差し込んでいるだけで、暗く静寂に包まれている。
(カーテンが開いてる?)
「お父様…お父様!いらっしゃいませんか…?」
(もう、お休みかしら…)
やはり返答がないので、美也子は足下に注意を払いながら部屋の奥へと進んだ。
「お父様…?」
鍵は開いていたはずなのに、まるで人の気配を感じない。
(部屋にいないと言う事は何処かに出掛けたのかしら…)
そのうち戻って来るだろうと思い、暫し待ってみたが、いつまで待っても主人は部屋に戻っては来なかった。
だが、それにしては廊下の電気が消えているのは不自然だ…
(確かに疲れたから寝ていると聞いたはず…一体、何処に行っ……)
「私の…私のせいであんな事に…ッッ!!」
(……!)
埒が開かないので、ひとまず美也子が部屋に戻ろうとした時、不意に女の叫び声が聞こえてきた。
「夏生さんのせいではありません…落ち着いて!」
続いて聞き覚えのある男の声が聞こえてくる。
(夏生さん……と、日下部…さん?)
どうやら声は壁の向こう…日下部の部屋から聞こえてくるようだ。
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