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日下部は主人が立ち上がるのを確認すると、先導する形で歩きだした。
「なあ…一体私を何処に連れて行くつもりなんだね?」
「…ついて来て頂ければ解りますよ。」
「日下部…理由くらい話してくれてもいいだろう。」
「すぐに…解りますよ。」
そう言ったきり、口を閉ざしてしまったので、主人は仕方なく日下部の後に従うしかなかった。
「さあ、此処です。」
日下部は立ち止まると、恭しく主人に向かって一礼した。
「此処は……」
「そうです…客間のドアの前です。」
「そんな事は見れば解る!」
何を訊いても冷静な日下部の態度が勘に触ったらしく、主人は思わず声を荒げた。
「私はこの館の主だ!それに客間がどうし…」
がっ…!
「な……!?」
言いながらドアに手を掛けようとした瞬間、日下部は主人の手を掴んだ。
「ドアを開ける前に聞いて頂けますか?今から私が話す事、そして…目にする事、全てを受け入れてください。」
日下部は、そう言うと、掴んだ手に力を込めた。
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