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日下部の作戦は見事に失敗に終わってしまった。
「宗一様……」
日下部は宗一の死体に向かってそう呟くと、一礼して部屋を後にした。
…暫くして再度、客間に戻ってくると、その手には自分のシャツとバスタオルがあった。
「……失礼。」
べりっ…
日下部は皮膚に貼りついていたシャツを一気に剥ぎ取ると、水分を含ませたバスタオルで宗一の身体を丹念に拭いた。
そして…宗一には少しばかり大きかったが、自分のシャツに着替えさせた。
「こんなものしか用意出来ずに申し訳ありませんが…参りましょう。」
日下部は宗一の腕を肩に掛けると、そのまま庭へと向かった。
(せめて……ロックの傍に。)
そもそも自分が駆け落ちを見逃していれば、夏生や宗一は死ぬ事はなかったかもしれない…
それに、美也子もあんな目には遭わなかったはず…
(全部…私のせいだ……)
日下部はロックの犬小屋のある裏庭へ向かいながら、自らの行動を悔いた。
「詫びて済む事ではありませんが、お嬢様だけは命に変えても私が……」
日下部は犬小屋の傍に宗一を寝かせると、スコップに掛けた手に力を込めた。
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