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「日下部、貴様の持ってきた板では役に立たん…」
主人は冷たく言い放った。
「は、申し訳あ…ッ!」
言われてみれば、ロックの犬小屋から剥ぎ取った板は2枚…
美也子の部屋のドアに打ち付けられている板は少なく見積っても10枚以上ある。
「この板は一体……」
「ベッドと部屋のドアを壊した…貴様になど頼まずに最初からこうすればよかった。」
「も、申し訳ありません………そ、それより、お嬢様は何処に……」
日下部は予感を裏切られる事を祈りつつ訊いた。
「………」
暫しの沈黙の後、主人は無言のまま顎でドアを指した。
「え……な、中……!?」
一瞬、自分の耳を疑った。
「鳥は鳥籠の中が一番だろう。」
「ば、馬鹿な……!」
いくら娘を手元に置いておきたいとは言え、常軌を逸した奇行とも言える行動だ。
ガランッ…!
「………ッ!」
そして、主人は驚く日下部の目の前に板を数枚投げて寄越した。
「…こ、これ…は?」
「貴様は窓側に板を打ち付けて来い…今、直ぐにだ。」
「そッ…そんな事をしたら、お嬢様は…!」
日下部の視界が一瞬歪んだ気がした。
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