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「で、出来…ません!!」
「何……ぃ?」
主人はゆっくりと日下部に歩み寄り、胸ぐらを掴むと静かに耳元で呟いた。
「美也子の死体にお目に掛かりたいのか?」
「旦那様……!」
日下部は主人の手首を強く掴むと、真っ直ぐ主人の目を見据えた。
「……くっくっ、冗談だよ。」
主人は日下部の手を振り払うと、今度は肩に手を置いて言った。
「心配するな…食事だけは運べる様にしてある。」
そう言って主人が指差した先には、猫が1匹やっと通れそうな風穴が開いていた。
「そんな…それではお嬢様は……」
「どうするんだ…協力するのか?しないのか?」
「く……!」
今ここで主人の命令に背けば美也子の命が危険に晒される事は間違いない…
日下部に選択の余地はなかった。
(生きてさえいれば…)
「……畏まりました!」
日下部は強い口調でそう言うと、板を手にした。
そして、そのまま渡り廊下にある美也子の部屋の窓へと向かった。
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