1102人が本棚に入れています
本棚に追加
「第一、何で狸の次は鳥なんだっっ!しかも狸と違って口調が腹立つっっ!鳥なら恩返しに機織りでもしろっっ。狸から恩返しされた事ねえけどなっっっ!!」
「宗ちゃん訂正。薬嗣、頭の打ち所悪かったんじゃないの?落ち着け薬嗣。」
「俺、一生このまま愉快な人生なのか?喋る動物に囲まれて、ムツ〇ロウさんも羨む人生なのか?最近、フィールドワークにも行けてねえし………。」
ぶつぶつ言い出した薬嗣の眼前に、鳥は乗り出した。
「や・く・つ・ぐ・く・ん。もう一回言うよ?落ち着け。落ち着かねえと、熱いベーゼを交わすぞ?」
鳥の気迫と脅しに押されて、薬嗣はやっと、落ち着きを取り戻した。
「よし落ち着いた所で、宗ちゃん説明。」
「その前に。教授に何かしましたら、焼き鳥か唐揚げにしますよ?」
「!!し、しないよっ!あれは言葉のアヤでしょう?!」
身体を捉まれて、鬼気迫る勢いの秘書に、流石の鳥も慌てる。
「アヤですか……。まあ良いでしょう。教授。貴方は夢の中で、何者かに捕われていたんですよ。その手にしている石を見てください。」
宗に言われて、手のひらにいつの間にか握っていた、緑色と乳白色の破片を見る。
「………そうだ……。俺、何時もの夢かと思ってふらふらしていたら、変な植物みたいな生き物みたいな、うねうねとかした触手みたいな奴に、足捉まれて……それでこの石が………。………割れちゃったな……。」
小さい頃、弟が産まれる前に両親と一時暮らしたニュージーランドで、唯一のご近所さんだった人に貰った石。何度も助けられて、宗に出会ってから、宗が力を込めてくれて、より一層助けてくれた。
もう一個も、夢で出会った月人君に頂いて、大事にしようと思っていたら、こんな形で失うなんて。
薬嗣がしんみりとしていると、宗が薬嗣を抱きながら立ち上がる。
「教授。詳しいお話は帰ってからゆっくりします。金さん。」
「オッケー。さーて、薬嗣を虐めた敵さんを追い出しますよ~。抜かるなよ。宗ちゃん!」
鳥が口から炎を吐き出すと、暗闇が明るくなる。その中に、誰かが立っていた。
「…………餮……?」
薬嗣が声をかけると、餮はニンマリと、歪んだ笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!