第八章

18/22
前へ
/169ページ
次へ
 宗が後数メートルで、餮の身体に刃を突き刺さる距離に来た時、突然無数の鎖が宗を拘束した。  「?!これはっ!」  宗が無理矢理鎖を切ろうと、剣を何度か切り付けるが、びくともしない。    ム・ダ・ダ・ヨ。コ・レ・ハ、カ・ミ・ヲ・ト・ラ・エ・ル・ド・ウ・グ・ダ・カ・ラ・ネ。     餮が手にしていたトランクから、無数の鎖が出ていた。その鎖は、獲物である宗を捕えると、ゆっくりとトランクに引きずり込もうとする。    ホ・ン・ト・ウ・ハ・ア・ニ・キ・ヲ・ト・ラ・エ・テ、イ・ウ・コ・ト・キ・カ・セ・ヨ・ウ・ト・オ・モ・ッ・テ・タ。デ・モ…………。     餮はニヤニヤと笑いながら、薬嗣を舐め回す様に見つめる。薬嗣はその視線に、再び背筋が凍り付いた。    ネ・エ・?コ・ノ・オ・ト・コ、ア・ニ・キ・ノ・ヒ・ショ・ナ・ン・デ・ショ・?コ・ノ・マ・マ・オ・レ・ノ・ニ・ン・ギョ・ウ・ニ・シ・ヨ・ウ・カ・?ソ・レ・ト・モ、ア・ニ・キ・ガ・カ・ワ・リ・ニ・ナ・ル・?     薬嗣はその言葉に直ぐに反応した。  「………代わりになったら宗は助けてくれるのか?」    モ・チ・ロ・ン。ダ・イ・ジョ・ウ・ブ・ダ・ヨ・?コ・ノ・ナ・カ・ニ・ハ・イ・ッ・タ・ラ・、オ・レ・イ・ガ・イ・ノ・コ・ト・ハ・、・カ・ン・ガ・エ・ラ・レ・ナ・ク・ナ・ル・カ・ラ・ネ・?     「………教授が持ち主以外の事を考えられなくなるトランクですか。私も欲しいものですね?」     !!!     宗は袖口に隠してあった、和紙を取り出して素早く鎖にちりばめる。  「砕!」     パンッ!     小さな爆音と共に鎖は宗の戒めを解いた。    バ・…・カ・ナ・ッ・!コ・レ・ハ・カ・ミ・ニ・ハ・ヤ・ブ・レ・ナ・イ・ジュ・ツ・ノ・ハ・ズ・ッ・ッ・ッ・!・!     宗はやれやれと、溜息を吐く。  「ええ。神の技で破れないと教えて頂いてましたので、人間の術で破りました。これでも私、人間界で最高最強と謳われた陰陽師の孫なんですよ?」  艶然と微笑む宗は、餮の笑顔よりも、遥かに邪悪な気配を漂わせていた。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1102人が本棚に入れています
本棚に追加