第九章

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 …………しかし、『そう、です。』て、名前なんだか返事なんだ分からねえよな。  「教授?」  あー今の宗の声だ。ガキんちょの時は可愛い声だったよなー。今じゃすっかり低音のスケベーな声になっちゃって。  「………どうやら夢でも見ている様だな。」  あー涼やかな良い声も聞こえる。この声は。  「俺、知らねえっっ!」  薬嗣が勢いつけて起き上がると、宗が頭を避けていた。  「お早うございます。二度目ですが。」  「何時もこうなのか?薬嗣の目覚めは。血圧高過ぎなんじゃないのか。」  ……………………………………………兎………………。  「鳥の次は兎かよっっっ!!」  横たわる薬嗣の腹の上には、毛並みが銀色の目が青い兎がちょこんと立っていた。  「ええと………オッサン其の三さんらしいです。」  「金の奴だな。アイツは火月から何時もオッサン呼ばわりされて、些か捻くれてしまってね。ああ、俺の事は銀とでも呼んでくれ。君達の案内役だ。」  流暢に喋る兎。一体なんなんだこのファンタジーワールドは。  「さあ、この世界……正式には夢だが。主が待っているぞ。ついて来い。」  兎が薬嗣から降りて、軽やかに跳ねた。  「これも夢?」  先程とは大違いだ。周りには花々が咲き乱れ、春の日差しが差し込む、和で、暖かい。  「………夢の主があの方ですからね。私もあの方の夢は初めてです。」  「俺は………多分二度目かな?」  兎が跳ねた方角を見ると、そこにはキラキラと光るハニーブロンド。顔には太陽よりも眩しい満面の笑顔を称えた、月人が佇む。  「薬嗣様!宗様!どうしたんデスか?ええと………。」  「銀だよ。月人。」  兎が意味ありげに月人に伝えると、笑顔のまま頷いた。  「はい。銀様。」  「ちょっとあの二人が疲れたから、休ませて欲しい。」  「!!大変デス!ええと、枕とお布団と、炎月様特製のお薬を持ってきますっっ!」  「落ち着け。月人。そこまでしなくても良い。」  慌てる月人を見て薬嗣と宗は、やっと緊張が解けた気がした。   
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