第九章

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 「ええと……薬嗣様がうねうねな夢で迷子になって、宗様が迎えに行って、金様が突き落としたと言う事ですか。」  「と言う事だ月人。」  兎と月人が真剣に話しをしているのを見て、何処までも和めそうだったが、肝心な事を聞くのを忘れていたのを、思い出した。  「………でも……何で、月人君の夢に突き落とされたんだ?」  「それはな、月人が癒しの力の持ち主だからだよ。薬嗣や、他の四季神の持つ治癒の力と、少し違う。月人の力は天界で一番の『浄化力』を持っている。」  兎は何処から取り出した急須でお茶を淹れて、薬嗣と宗に渡した。  「悪い気に当てられた様だからね。馬鹿鳥なりの気遣いだろう。飲め。それも穢れを流す茶だ。」  ……………飲めって……。  湯呑みを覗いた二人は、ゴクリと喉を鳴らした。  その中に入っている液体は、呪われた沼と形容できそうな、ドロリとした深緑色。  「銀様のお茶は効きますよー。この間、風月様も腹痛で倒れましたけど、このお茶で目が覚めました。」  ………それは、死者をも蘇らせる味と言う事では。薬嗣が、月人の顔を見ると、ニコニコと飲むのを待っている。  俺、この笑顔に弱えーよな……。  「い、頂きますっ!!」  薬嗣は覚悟を決めて飲み干した。  「……………美味い……。」  「…………ですね。」  ふと見ると、宗もお茶を飲み干していた。  「見た目は悪いが、味は良いだろ?月人と俺のお茶で厄落としは済んだな。帰るか?」  「ちょっと待って。月人君。」  「月人で良いですよー。薬嗣様。どうしました?」  「実は……。」  薬嗣は石の欠片を取り出して、割れた理由を述べて謝った。  「謝らないでください。じゃあ、俺の石、お役に立てたんですね。薬嗣様のお役に立てれる様に渡した物ですから、気にしないでください。」  月人は欠片を受け取り、欠片に話し掛けた。  「お疲れ様でした。薬嗣様を守ってくれて有り難うデス。………お休みなさい。」  月人の手の中で、乳白色の欠片は砂になり、消えた。
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