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月人君を見ていると、今迄の出来事が夢に思える。心が澄んで行く………正にそんな気分だった。
「あのさ、月人君。やっぱり何かお礼させてくれないかな。」
薬嗣が照れ臭さそうに、月人に話しかけると、月人が、ニッコリと笑みを溢す。
「実はですねえー。一個お願いがあったのデスよー。」
「月人。余り無理は言うなよ。」
兎は、月人の頭の上に乗る。
「薬嗣は今、大学の教授と言うものをしている。研究やら勉強やらで忙しい筈だからな。」
「…………兎、詳しいな。」
「このぐらいはな。それと薬嗣。兎では無い。銀と呼びたまえ。」
「銀様。偉そうです。そう言う態度は良くないデス。」
月人は兎を見上げて注意を促した。兎は大して気にも止めず、そうか。と一言だけ返すと、目を瞑る。
「で、月人。願いとはなんだ?さっさと言え。俺が気になる。」
「…………何か、狸に似てるな。兎。」
「薬嗣様!火月様はこんなに偉そうじゃないですよー。俺の前では、優しくて、強くて、格好良くて、頭も良くて、それとですねー……。」
「いや、君の惚気は聞いてないよ?月人。まあ、火月は良い男なのは認めるがね。」
薬嗣は二人の掛け合いを見て、笑ってしまう。
「笑われてしまいましたよー!銀様。」
「笑われたのはお前さんだけだよ。………良いから、お願いどうした。」
「あ。そうでした。あのですね………。」
ポショポショと、小さな声で、薬嗣の耳元で願いを伝える。薬嗣はそれを聞いて、やっぱり笑ってしまった。
「そんな事……。」
「そんな事じゃナイですよー。火月様に知られたら怒られますから。でも、薬嗣様と宗様が手引きしてくれたら、大丈夫デス!」
「………分かりました。では、私からも教授を助けて頂いたお礼として、きっちりと手引きをさせて頂きます。」
「はい!お願いします!」
月人は、ペコリと頭を下げた。
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