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「へっぷしゅんっっ!!」
「おんや~?天狗様、風邪ですか?」
手酌でお茶を淹れながら、煉は言った。
「ぬー。違うな。これはワシの悪口、若しくは陰口をたたいている奴がおるっ!」
「天狗様、モテモテっスからねえ。案外、薬嗣でも噂してたりして。…………………それよりも、天狗様。」
煉が引き締めた表情で、真剣に狸に声を掛ける。
「なんじゃ?何かあったのか?」
「俺、さっきからお茶飲み過ぎで、トイレに行きたいんですが、どうやって行きましょう?」
「………お主も一応美形の類いなんじゃから、排泄行為はせんでも良いんじゃないのか?」
「んな訳ありますかいっっ!俺は、まつ毛がビシバシ描かれ、白いタイツを履いた少女漫画の王子様や、男装の麗人じゃないですよっ!!」
「…………お主のそのマニアックな知識が時折怖く思える………。」
やれやれ、と、狸は立ち上がると、煉が貼った札を一枚剥がして、部屋の結界を解く。
「あれ?もう良いんですか?」
「奴の気配は全ての世界から消えた。桔梗と八朔の仕事が終わった証拠じゃ。坊と小僧も、無事出会えた様じゃしの。煉。」
「…………なんスか。」
狸のピリッとした気配を肌で感じる。
「お主が小僧を守りたいのは解るがの、遣り過ぎるな。………下手したらワシがお主を殺す事になる所じゃぞ。」
「保険ですよ。万が一って事もあるでしょ?」
「だとしてもそれはお主の仕事では無い。自重しろ。ワシはお主が居なくなると結構困るんじゃぞ?」
最後のセリフと共に、にまりと笑われる。
「はは。そりゃー、簡単に軽はずみな行動取れませんね。………ごめんなさい。」
煉は大人しく頭を下げた。
「よろしい。お、そうじゃ、先に桔梗と八朔を戻すが良いか?その方が楽なんじゃが。」
「良いですよー。その後、お花を摘みに行きますから。」
「………言い方を変えれば良いと言う訳でも無いと思うぞ?」
狸は煉を踏み台にして、扉を開ける。が。扉の向こうに見えたのは、桔梗が八朔のズボンを下ろそうとしている光景だった。
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