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ぱたん。
狸は何も言わずに扉を閉じた。
「天狗様、今の……。」
「ワシは知らん。」
「……知らんって。今の桔梗様とみかんちゃん……。」
「ワシには何も見えなかった。」
「そんなお年でも無いでしょう?否定したいのはわかりますがね、桔梗様、みかんちゃん襲ってましたが?助けなくて良いんスかー?絶対怒られますよ。」
「助けろっっっ!!」
バンッ!と大きな音がして、剥き足の八朔が、怒り心頭で、飛び込んで来た。
「………ほら怒られた。」
「……………お楽しみの所、悪かった。」
「楽しんでねえっっっ!!これを見ろっっ!」
「わーお。みかんちゃん、大胆ねえ。綺麗なおみ足。」
「お主は本当に冷静じゃな。………ほー。見事なサファイアじゃの。パパラチアか?」
「パパラチア?何ですかそれ?」
「サファイアはマルチカラーな鉱石での。同じ鉱石でも赤色はルビー。それ以外のカラーはサファイア。サファイアの中でも、ピンクとオレンジの中間色をパパラチアと言うてな、原産国のスリランカでの言葉で、蓮の花の意味なんじゃ。別名、インド洋の朝焼けの色とも言われており、希少品じゃよ。真ん中のサファイアもコーンフラワーブルーで最高級品じゃのう。」
「ほうほう。良かったね、みかんちゃん。これ売ったら食いっぱぐれ無いよ。」
軽口を叩く二人とは対照的に、部屋の空気は一気に重くなった。
「…………人の太腿撫で回しながら、言う事はそれだけか?…………てめえ等。」
「「ごめんね?」」
狸と煉は持てる可愛いらしさを全部発動させて、愛くるしく謝った。
「ははは。そんな可愛く謝るなよ。……………………噛み殺されるのと、蹴り殺されるの、どっちが良い?」
額に青筋を浮かべ、笑みを浮かべる八朔は、本気で殺る気満々だった……。
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