最終章 芽吹く季節に出会えた貴石(あなた)

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 「よーし。お前等。良く聞け。狸の話しでは、取り敢えず平和は取り戻したようだ。」  サンコートを破壊した三人を正座させ、みかんは眼鏡をキラリと光らせた。  「因みに此処の修理費は三人で割った金額をそれぞれに請求する。桔梗。貴様もだ。」  「………俺の神殿だが。」  「貴様の神殿だろうが、『秋神』の神殿である以上は、私の所有ではなく、公の所有に決まってるだろう。よって、貴様も同罪!俺が綺麗にガーデニングしたのにっっ!草花代金も請求するからなっっ!!」  「みかんちゃんって、本当に良いねえ。」  「ええ。我が主には勿体ないぐらいです。」  青羊君が、お茶を淹れながら笑っている。  「薬嗣様には緑茶を。煉様はコーヒーでしたね?八朔様は………。」  「みかんも緑茶。うんと濃くしてくれる?あいつ、腹が立つと濃い緑茶飲みたくなるんだ。」  「おや。主。薬嗣様の方が、八朔様の事を解っていらっしゃいますよ。」  「…………俺は……これから理解するから良い。」  「俺はお前を一生理解できなくても良い。で、煉は直ぐにでもお勤め出来るのか?」  みかんは唐突に話しを変えた。そう言えば、さっき何か言ってたな。  「俺?んー。ま、2・3日ぐらい時間頂戴。それならOKよ。でもさ、何でそんなにお急ぎ?」  「もう少ししたら学園祭があるんだよ。」  「学園祭?」  「そう言えば、そんな時期かー。」  学園祭。学園内の行事の中で、最大の催しだ。学園全てが秋のある1週間、この祭一色に染まる。  学内の人間は勿論の事、近所の商店街、学校関係者の知り合い、挙げ句の果てに、海外の留学中の研究者まで、この学園祭の為に帰ってくるらしい。当然、来客も半端ではなく、規模はもやは、一学校の学園祭を越え、街挙げてのイベントと化すらしい。………らしいと言うのは、実は俺、この学園祭に出た事が無いのだ。学園祭開催期間は、家で大人しくしているのが慣例となっていた。  「俺、関係無いからなあー。この体質だから出るとマズいしさ。」  そうなのだ、いくら秋とはいえ、万が一を考え、毎年、みかんと道摩が俺を家でガードをしてくれていた。
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