日が沈んだある町

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 『いつもの場所に来なかったら、わかってるよな?』  (もし来なかったら・・・・・・)  盗みたくない。でも行かないと殴られる。殴られたくない。でも盗みなんてしたくない。  ぐるぐると負の循環が頭の中を駆け巡っていく。  「嫌な事を終わらせてあげようか?」  彼女が微笑みながら言う。  「終わらせてくれるの?」  ワラにもすがる想いで雪が尋ねる。  彼女は頷き、玄関の扉を開けた。  「ついてきて」  雪はその言葉に導かれるように靴を履き、外へ出る。  彼女も外に出て、扉を閉める。  「さあ、行こう」  歩きだす彼女に雪は何の疑いもなくついていく。  今、雪はこの負の循環を断ち切ることしか考えていなかった───
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