第一章──果汁20%

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疲れる。 こいつといると疲れるんだ。 ……楽しくないわけじゃないけどな。 ちなみに、蜜柑とは別のクラスだが、俺と桃は同じクラスだ。 ふと時計を見ると、そろそろ本格的に遅刻しそうな時間になっているではないか! 桃のせいだろ、確実に桃のせいだ。 「安心しろ檸檬! あの時計、昨日俺が少し遅らせておいたんだ」 「遅らせてどうする! 走るぞ!」 俺と桃は、廊下を走ってはいけないという教えを完全に無視し、俺は焦りながら、そして桃はどこか楽しそうに笑みを浮かべながら、全力疾走した。 俺達の高校は、担任教師が教室に入るよりも先に教室に入れば、遅刻は何とか免れることができる。 幸い、廊下には教師は誰一人おらず、このまま走っても注意はされそうにない。 が、しかし。 逆に考えれば、もうすぐ始業のチャイムが鳴ろうとしている時間帯に、廊下に教師が誰一人としていないのも逆に不自然だ。 もしかして……もう各教室内に入っているのだろうか。 そうなってくるとやばいな……先に教室に入られていたら、もう誤魔化しがきかない。 と、ここまで考えて、俺はある一つの可能性に気が付いた。 そうだ、俺らの担任は普通じゃない。 かけるか、担任の異常なまでのドジッ子ステータスに! 俺らの内申点がかかっているんだ……期待に応えてくれ、先生! 「さん……にー……いち!」 自分の腕時計を確認しながらカウントダウンする桃。 そして、カウントダウンの終了と同時に、校内にチャイムが鳴り響いた。 「おぉっ! 凄くね!? 俺今カウントダウンぴったりだったぜ!?」 「遅刻という名の死へのカウントダウンだけどな!」 くそっ、教室はもう目の前だったってのに……ん? 半分諦めてため息をついたその時だった。 一直線の廊下の突き当たり──丁度俺達と対象の位置にいる人物が目に入った。 その人物は大量のノートやプリントを山のように抱え、危なっかしい足取りで歩いている。 間違いない……あの教師とは思えない凶悪な顔、同じく教師とは思えないごつい体格、そしてさらに同じく教師とは……というか一般人とは思えないこのオーラの持ち主は……。 「あっ! 先生おはよー!」 「馬鹿か、お前は馬鹿なのか!」 まだ俺達に気付いていなかった人物──俺達の担任の先生に、桃は大きく手を振り、笑顔で挨拶をした。 うわぁ……気付かれずに素早く教室の中に入れば、なんとか遅刻は免れたかもしれないのに。
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